特集記事

※1 文化財保護法により、国の認定を受けた選定保存技術「玉鋼製造」保存団体
※2 文化財保護法により、国の認定を受けた選定保存技術「玉鋼製造(たたら吹き)」保持者
堀尾高校2年生の時、たたら操業の火入れ式の映像を見たことがきっかけです。自分が育った奥出雲で、古来からの製鉄が脈々と受け継がれていることを知り、「やってみたい」と思いました。高校卒業後は、いったん全く別の会社に勤めましたが、たたら製鉄の迫力を忘れることができず、後に私の師匠となる木原明村下を直接訪ねました。「その気があればやってみなさい」と言って紹介していただいて、現在のプロテリアルに入社しました。安来にある同社の工場で製鋼技術を学び、後に鳥上木炭銑工場で操業に従事するようになりました。
知事そうなんですね。私も令和7年に火入れ式に伺いましたが、薄暗い中、炉内に空気を送り込むふいごの勢いで湧き上がる炎の色は、神秘的でとても印象に残っています。
堀尾村下は操業の全責任を負います。原材料の吟味から始まり、操業中の火の通り道、鉧の成長など全てを把握して進めなくてはいけません。不定形で物事が進むので、その時々の判断にかかっています。常に最適を考えて、1、2時間先の釜の状態を予測して決断をしていくというのが一番難しいところだと感じています。
堀尾今現在、日刀保から委嘱を受けている村下養成員が12名います。皆、たたら製鉄をやりたいという者たちで、日々切磋琢磨しています。我々の本質は、日本刀に不可欠な玉鋼を安定供給して、日本刀文化を守ることです。これまで歴代村下が継承し、良質な玉鋼を生み出してきたことを、今度は自分たちが守っていくのだと常々心に留め置いています。師匠は、「村下は使命感を持ち、誠実に対応して、最後は根性を出せ」と言っていました。たたらの三昼夜操業に従事していると疲れが出る時があるのですが、根性で押し切れと。今の時代、それを前面に出すのはなかなか難しくなってきていますが、たたら操業の厳しさも、次世代に伝えていく必要はあると感じています。また、操業の回数を重ねて身に付くことがたくさんありますので、技術継承の面でも三昼夜の操業を、今後も村下の責務として果たしてまいる所存であります。
知事さらに若い世代への普及活動もされていますね。
堀尾ものづくりの原点として、近隣の小学生や高校生などの体験学習に取り組んでいます。実は村下養成員の中にも小学生の時に体験したという者が4名います。まさに後継者の養成にもつながっていると実感します。
堀尾良質な玉鋼を生み出してきた歴代の村下に負けず劣らない鋼を生み出していきたいです。そのために操業に関わる皆が一丸となるよう、リーダーシップをとり、「誠実生美鋼※3」を肝に銘じ、後進に教えていきたいと思っています。村下としてまだまだこれからですが、たたら製鉄を未来永劫継承していくためにはどのようにつないでいくかを常々考えていこうと思います。
知事最高の玉鋼をつくるだけでなく、後継者育成という二つの使命が課せられているのですね。今年の操業も成功することを祈っております。
※3 「誠実生美鋼」とは、㈱プロテリアル安来工場の工場訓であり、誠実な真心をもってものづくりに励めば、清らかな美しい鋼が生まれるという意味を示す。
奥出雲町出身。たたら製鉄を継承したいという気持ちを抱き、平成元年に現在の株式会社プロテリアル(旧日立金属)に入社。同5年に同社の鳥上木炭銑工場勤務となり、当時の村下である故・木原明氏に師事しながら、たたら操業に携わる。同26年に村下代行となり、令和6年7月村下に就任した。